中小企業倒産防止共済

兵庫県明石市の税理士、吉村です。

本日は、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)についてご説明します。
いわば節税の王道となっている制度であり、ネット上でもいろんな記事が出ていますが、今回は私独自の視点も入れて記事にします。

まずは、制度の概要から

【概要】

 中小企業倒産防止共済は、取引先事業者が倒産した際に、連鎖倒産を防止するための制度であり、掛金の10倍(上限8000万円)まで借入することができる制度です。
 連鎖倒産防止を目的としていますが、小売業者でも加入することができます。
 なお、取引先倒産の場合は無利子で借入できます。

【掛金】

 毎月の掛金は、5,000円~200,000円まで自由に選べ、毎月27日に口座振替で払込みします。支払った掛金は、全額損金算入できますので、節税にもなります。
 なお、掛金の上限は、800万円でとなります。

 ≪point1≫
  上記金額の範囲内で増額・減額することができます。
 ≪point2≫
  前納することができます。

【解約手当金】

 任意解約の場合、掛金納付月数によって下記のとおりの解約返戻率となります。

 

掛金納付月数 返戻率
1~11か月 0%
12~23か月 80%
24~29か月 85%
30~35か月 90%
36~39か月 95%
40か月~ 100%

  40か月以上掛けた場合は、返戻率100%の状態でいつでも解約することができます。

 

よしむら総合会計事務所では!

 ①節税
 非常に優れた制度ですが、掛金上限額が800万円というのがネックです。
 この限られた金額を最大限生かすためには、所得金額に応じて掛金の増額・減額を検討するべきです

 中小法人の場合、所得800万円までは軽減税率の適用が受けられますので、見込所得が800万円以下である場合には、掛金を減額し、掛金上限額までの『枠』を空けておくことも検討しましょう

 一方、大きく所得が計上される場合、決算期末に12か月前納(年払)の手続を行いましょう。
この制度は、12か月前納した場合には、支払った年度の損金に算入することができます。
 ただし、事前に前納の手続きが必要です。

 ②銀行審査面
 毎月の掛金は、支払保険料等の費用で計上すると、業績面が悪化し、銀行審査上不利になります(節税すると、銀行評価が下がるという宿命です)。
 毎月の掛金を保険積立金として資産計上したうえで、法人税申告書(別表4)で所得減算調整すると、より実態を反映した見栄えのよい決算書となります(倒産防止共済には損金経理要件がありません)。
 また、貸借対照表に表示することにより、倒産防止共済加入済であることを、アピールできます。

【注意点】

 なお、掛金を損金に算入するためには、『特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書』(※別表10の7)及び『適用額明細書』に必要事項を記載する必要があります。※別表の番号は、年度によって異なります。
 添付されていない申告書が多いのですが、掛金の損金算入が否認される恐れがありますので、今一度ご確認ください。